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IWC総会―南極海の捕鯨、見直しを

2010年6月21日 朝日新聞 社説

 捕鯨国と反捕鯨国が、互いに相手が絶対に受け入れないような主張を繰り返す。そういう不毛な対立の下、20年以上にわたって国際捕鯨委員会(IWC)は機能不全に陥ってきた。

 何とか事態を打開しようというIWC議長の提案が、きょうからモロッコである年次総会で議論される。IWC正常化のまたとない好機である。

 今後10年間は商業捕鯨、調査捕鯨といった区別をなくし、IWCが海域と種類ごとに捕獲数の上限を決める。こうした一括管理によって世界全体の捕獲数を大幅に減らしていく、というのが議長案の狙いだ。

 南極海における日本のミンククジラ捕獲枠は当初5年間、現在の調査捕鯨の半分以下の年400頭に減らされる。その先の5年間は、さらに半減して年間200頭だ。大幅な譲歩を強いられるのは間違いない。

 その代わり日本の沿岸では、年間120頭を上限にミンククジラを捕獲できるようになる。これは事実上の商業捕鯨といえる。

 民主党政権になって政府は「沿岸捕鯨を復活できるのなら、南極海は縮小もやむをえない」という現実路線に変わった。11年目以降どうするのかという課題はあるが、今回の議長案は受け入れがたいものではなかろう。合意に向けて努力するべきだ。

 最大の課題は、かたくなな姿勢を崩さない反捕鯨国をどう説得するかである。

 豪州は「南極海の捕鯨は認めない」と議長案に反発し、妥協するどころか「日本の調査捕鯨は違法だ」と国際司法裁判所に提訴した。このような反捕鯨国から譲歩を引き出すのは容易でない。

 日本はこの際、反捕鯨国が特に問題視する南極海の調査捕鯨の大胆な見直しを検討してはどうか。

 これまで政府は「国際条約に基づくものだ」と調査捕鯨の正当性を訴えてきた。だが、反捕鯨国や過激な環境保護団体との戦いに多大な労力を注いでまで「南極海」に固執する合理的な理由があるのか、冷静に考えたい。

 いま、日本人のクジラ肉の消費量は極めて少ない。各種の調査によると、国民の平均的な消費量は牛肉や豚肉などの100分の1以下の水準だ。仮に南極海産のクジラ肉がなくなっても、最小限の沿岸捕鯨ができれば需要をまかなうことはできる。

 クジラが増えすぎると、魚が大量に食べられて漁業に打撃がある。だから科学的な生息調査は欠かせない。そんな意見もある。だとしても、日本がはるばる南極海まで出かけてクジラを捕る理由としては説得力が弱い。

 議長案がテーブルに載ったいま、ぜひとも反捕鯨国に妥協を促す。そんな覚悟で交渉に臨んでもらいたい。

by yupukeccha | 2010-06-21 06:00 | 社会  

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