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原油流出、クロマグロの産卵海域を直撃 メキシコ湾

2010年5月31日14時31分 朝日新聞

 【ワシントン=勝田敏彦】米史上最悪の米南部沖メキシコ湾の原油流出が、日本が大量に輸入する大西洋クロマグロの産卵の海域とほぼ重なっていることが、米スタンフォード大などの研究でわかった。この時期は産卵期とも重なっていた。メキシコ湾産の大西洋クロマグロは絶滅の危機にあるとの指摘があり、影響が心配される。

 米カリフォルニア大デービス校との共同研究で、28日発行の米科学誌プロスワンに論文が発表された。

 大西洋クロマグロは、地中海で産卵する群とメキシコ湾で産卵する群に分けられる。後者は毎年3~6月にメキシコ湾に回遊してくる。研究チームは、キハダマグロなどの漁での混獲記録や、クロマグロを捕獲して回遊追跡装置を付けた時の記録を分析した。

 その結果、クロマグロはやや水温の低い湾内の二つの海域に集中して回遊していた。特に北東側の海域は原油が広がっている海域と重なっており、回遊のピークは流出が始まった4~5月だった。

 クロマグロは海面付近で産卵する。漂っている油膜で卵や稚魚が死滅する恐れがあり、卵は油を含むため原油の油滴を小さくして分解を促す薬剤の影響も心配される。

 流出海域の近くにはメキシコ湾内で蛇行後、北米東岸を北へ向かう暖流「ループ・カレント」が流れる。この海流はクロマグロの回遊ルートとも一致しており、原油が海流に乗って広がれば、長期的には成魚にも影響が出るとみられている。

 流出の前に行われた研究だが、研究チームのバーバラ・ブロック・スタンフォード大教授は「残念ながら、原油流出は場所も時期もクロマグロの産卵と重なった。2010年産減少の影響は深刻になるだろう」としている。

 日本に供給されるクロマグロのうち半分は大西洋産とされる。メキシコ湾では個体数激減のため、1980年代から禁漁になっており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅寸前」に指定されている。

 大西洋クロマグロについては今年3月、野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約締約国会議で禁止する提案が採決されたが、日本などの反対で否決されている。

 米国では、89年にアラスカ沖で起きたタンカー座礁に伴う原油流出でニシンなどの漁獲量が激減している。

by yupukeccha | 2010-05-31 14:31 | 北米・中南米  

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