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タイ騒乱 ひとまず終息 観光打撃も止まらぬ経済成長

2010.5.27 05:00 SankeiBiz

 3月中旬から2カ月以上にわたってタクシン元首相派が首都バンコクの繁華街を占拠した「タイ騒乱」がひとまず終息した。観光産業が打撃を受けるなど、経済に大きな傷跡を残した。しかし、タイ経済は今年3~5%の成長が見込まれ、堅調だ。外資も東南アジア市場への拠点として同国への投資意欲は衰えていない。今後の課題は、いかにして政治の安定を取り戻すかだ。

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 ≪分析≫

 タイのアピシット首相は21日、国民に向けてテレビ演説し、タクシン元首相の支持団体「反独裁民主統一戦線(UDD)」の一部が暴徒化し、略奪や放火などが続いていた首都バンコクや地方の治安が回復したと宣言した。2カ月あまりの騒乱で、外国人ジャーナリストを含む、少なくとも85人が死亡し、1400人以上が負傷した。投資家は暴力を憂慮していたが、これまでのところタイ経済の立ち直りは比較的、早そうだ。

 ◆有利な投資環境

 世界のメディアの関心がタイの暴力に集まった結果、同国の国内総生産(GDP)の7%を占める観光産業は、過去2カ月間に著しい損害を被った。50カ国近くがタイへの渡航延期を勧告し、異例なことだが、タイ観光庁も公式に警告を出した。空港利用者は約30%減少し、ホテルの利用率は例年の4分の1の水準にとどまった。

 観光業が打撃を受けるのは避けられなかったものの、タイ経済全体は驚くほど堅調だ。タイ政府は今年の経済成長率の予測を4.0~5.0%から変えていない。同国のエコノミストの中にはやや低い3.0~4.0%と予測する者もいるが、いずれにせよ、同国経済が景気後退から堅実に回復していることを示している。

 国際ビジネスにとって同国が魅力的な理由はいくつかある。第1に、事業に有利な環境だ。近年、製薬の認可で外国企業と緊張が高まっているものの、タイの規制環境は、いくつかの重要な分野で改善している。米国とタイの自由貿易協定交渉はタイ国内からの反対に見舞われているが、外国資本がタイ国民の怒りの対象となることは、ほとんどない。

 第2は、立地条件。タイの空路は東南アジアの玄関として機能している。同国の金融や輸送インフラは、同地域の開発途上国での事業を支援してくれる。

 第3は、信頼できる官僚制度の存在だ。経済担当の官僚は西洋で教育を受けたものが多く、優秀だ。ゴーン財務相は英オックスフォード大卒の元銀行家で、政治危機にもかからず、海外の財界からの信頼は厚い。

 ◆総選挙と憲法改正

 暴力的な反政府運動はひとまず収まったが、タイ政治をより堅固な基礎の上に打ち立てる努力が求められる。アピシット首相は今月3日、テレビ演説で「国民和解の行程表」を示し、11月14日に総選挙を行うと発表。その後、タクシン元首相派のUDDがバンコク繁華街の占拠を続けたため、同首相は選挙日程を撤回した。しかし、同首相はいずれ総選挙を行わざるを得ないだろう。タクシン元首相派は、総選挙前にアピシット首相が退陣し、選挙管理内閣を作るよう求めている。

 憲法改正を実施するかどうかも問題だ。もし改正する場合、それを総選挙の前後のいずれに行うかが重要となる。タクシン派も反タクシン派の現政権も、相手陣営が憲法をないがしろにしてきたと非難している。総選挙前に憲法改正を行う場合、タクシン派が求める選挙管理内閣の現実味が増してくる。

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 ≪結論≫

 反政府デモを強制排除する過程で多数の死者が出て、タクシン元首相派は復讐(ふくしゅう)心に燃え、アピシット首相の退陣を求める運動にいっそう力を入れるだろう。同首相は、改めて総選挙を提案するだろうが、反政府陣営が穏健派と強硬派に分裂しているため、交渉は難航しそうだ。今後、タイ情勢は緊張した状態が続くとみられるが、外交関係と国際ビジネスはある程度、政治危機の悪影響を免れるだろう。(オックスフォード・アナリティカ)

by yupukeccha | 2010-05-27 05:00 | アジア・大洋州  

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