人気ブログランキング | 話題のタグを見る

グリーンピース鯨肉事件初公判

2010年02月16日 朝日新聞

 環境NGO「グリーンピース・ジャパン」のメンバー2人が、調査捕鯨船の船員が土産などの名目で自宅に送った鯨肉を青森市内の配送所から盗んだとされる事件。15日に青森地裁(小川賢司裁判長)であった初公判では、検察側が盗んだ行為の立証をする一方、弁護側は「鯨肉を勝手に持ち出した船員の『横領』を告発するため」として、2人の行為の正当性を証明しようとするなど、両者の主張の違いが鮮明になった。(有近隆史、藤原慎一)

 起訴状が読み上げられた後の罪状認否。窃盗と建造物侵入の罪で起訴された佐藤潤一(33)と鈴木徹(43)の両被告は、持ち出したことを認めた上で、「不正な鯨肉の横流しを公表しようとした。肉を消費したり転売したりするためではない」として無罪を訴えた。

 グリーンピースは、多額の税金を費やして行う調査捕鯨の船員が無断で鯨肉を持ち出して食用にしたり飲食店に売ったりしているとして、「業務上横領」にあたると問題視している。一方、捕鯨の調査主体となっている研究所などは土産は慣習で無断の持ち出しはないなどとしている。

 同日午後の証人尋問で検察側と被告側の意見の違いがさらにはっきりとした。

 検察側の証人として出廷したのは、運送会社の男性支店長と調査捕鯨船「日新丸」を所有する「共同船舶」の販売流通部の男性部長。検察側は男性支店長に鯨肉入りの段ボールを盗まれた後に苦情が相次いだことなどを述べさせ、窃盗行為とともに、それが会社の信用失墜につながったという悪質性を立証しようとした。

 一方の弁護側は男性部長への反対尋問で、調査捕鯨で取った鯨肉を船員らが土産品としていることが世間に知らされていなかったと指摘した上で、「大量に鯨肉を持ち帰ることが誤解を招く行為とは思わないか」などと質問。鯨肉を持ち出した実態の不透明さを明らかにしようとした。

 次回の公判は3月8日に行われ、鯨肉を発送した船員に自分の土産分の鯨肉を渡したとされる船員が弁護側の証人として出廷する予定。

◆海外からも本部事務局長ら8人傍聴◆

 運送会社に忍び込み、鯨肉入り段ボール箱を無断で持ち出したことを被告自身が公表し、世間に明るみに出た今回の事件。調査捕鯨のあり方に一石を投じることにもなっただけに、初公判は外国メディアも関心を寄せるとともに、海外のグリーンピースのメンバーも青森まで駆けつけた。

 雪の舞うなか、開廷15分前の午前9時45分、被告2人はそれぞれコートをまとい、まっすぐに前を見つめたまま無言で青森地裁に入った。

 グリーンピースはオランダ・アムステルダムにある本部からクミ・ナイドゥ事務局長が来日したのをはじめ、英国や豪州など海外8カ国8人が青森入りし、傍聴した。ナイドゥ事務局長は「(両被告は)不正を暴くという公共の利益のために行動した。裁判所には公平な裁判をお願いしたい」と話した。

 一方、グリーンピースが警戒するのは、反捕鯨団体として最近、捕鯨船に船を衝突させるなど実力行使で調査捕鯨を妨害している「シー・シェパード(SS)」と、同一視される風潮が生まれること。

 「暴力に訴えるSSとはまったく別の団体。反捕鯨の主張は同じでも我々は平和的な手段での問題解決を目指している」(国内のグリーンピース関係者)などとし、裁判に圧力をかけているように見られないよう、この日は横断幕を掲げたりシュプレヒコールを上げたりするような示威行動は一切なかった。(有近隆史、西川迅)

by yupukeccha | 2010-02-16 12:00 | 社会  

<< トヨタ急加速事故急増「死者34... 鉄道ファン運行妨害で被害届=線... >>