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【外信コラム】アイ・ラブ・ニューヨーク フリー

2009.10.22 03:19 産経新聞

 五輪招致の取材でシカゴを訪れた際、地元紙シカゴ・トリビューンの関係者と会った。シカゴという街の今後について話していたのだが、話は自然と新聞業界のことになった。というのも、同紙の親会社のトリビューン社はいま、破綻(はたん)の末に経営再建中という状況にあるからだ。

 彼は、第1面に題字と見出しと写真しか印刷されていない現在のトリビューン紙を手にとり、「昔はこんなのではなかったのだが」と肩をすくめた。そのあとに「これは読んだか?」と、「フリー」と題された1冊の本を取り出した。

 現代においては、売り上げ曲線で長い尾(ロングテール)を描く「売れない多数の商品」からも利益を得ることができる-という「ロングテール理論」で知られるクリス・アンダーソン氏の新著だった。フリー=無料という考え方がいかに社会を変えていくか、ということを論じたもので、この夏の話題作だ。

 伝統メディアに身を置く者にとっては厳しい内容だが、その現実から逃げることはできないな、ということで、とりあえずは意見が一致した。そして驚いたことに、彼は「まだ読んでいなかったのなら、あげるよ」といって、その本を私にくれた。

 彼は単に気前が良かったのか、それとも、タダで人にやるという行為がこの本にはふさわしいと思ったのか。書籍としての「フリー」はむろん、無料ではない。(松尾理也)

by yupukeccha | 2009-10-22 03:19 | 北米・中南米  

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