人気ブログランキング | 話題のタグを見る

不健康に生きよう

2009/7/16 10:00 日刊ゲンダイ

●健診の強要は「内なるテポドン」

 世に「カロリーオフ」が跋扈(ばっこ)している。ビール、チューハイ、カレー、カップ麺……次々と「オフ・ゼロ食品」が売り出され、メタボ予備軍が手を伸ばす。いまや市場規模は年1.5兆円。年間2割増というハイペースで拡大している。

 街やオフィスの分煙化、禁煙化も急速に進み、まるで喫煙派は“人にあらず”。朝から晩までテレビは「健康の秘訣」を垂れ流し、医師は「定期健診を怠るな」「早期発見・早期治療に努めよ」とやかましい。さすが、長寿大国ニッポン。国民の健康志向は、いよいよ高まるばかりだ。

「健康志向も度が過ぎれば一種の神経症です」と異議を唱えるのは、9月に「健康を追い求めない生き方」を著す渡辺利夫氏(70=拓殖大学学長)だ。アジア経済研究の権威である渡辺氏は、還暦を機に人間ドックや血液検査などを一切断った。

「私はヘビースモーカーでね。年1回の肺がん検診は必ず精密検査の要あり。苦しい生検を経て、異常なしの結果が出るまでの2、3週間は不安にさいなまれ、まさに強迫神経症者でした。加齢とともに頻度が高まる検診のたびに神経をスリ減らすなんて、何のための人生かと思ってね。痛い、苦しい時以外は病院に近づくまいと臍(ほぞ)を固めた。健康の不安から解放され、元気になりましたよ」

 かつて日本人は、人生を「お勤め」、死を「お迎え」と呼んでいた。健康・長寿を求めたところで、誰もが生老病死のサイクルから逃れられない。まして独身男は下手に長生きしたって、誰も世話してくれぬ成れの果てだ。好き勝手に飲んで食って、たばこを吸って、ヤリまくって、自然の摂理に任せて逝(い)く方が潔い。

 そんなふうに生きられることこそ、独身男の特権。〈不健全な生活を改めよ、されば健康は築かれる〉──厚労省や医学界が振りまく幻想にダマされてはいけない。

 大体、たばこの害毒ばかり喧伝(けんでん)されるが、定期健診のCTスキャンにだって害はある。断層画像取得に何度もX線を放射する。米コロンビア大の研究によると、1回のCTスキャンによる放射線照射量は1000〜1万ミリレム。広島、長崎原爆の爆心地から1.6〜3.2キロ離れた場所の量と大差ない。渡辺氏もこう言うのだ。

「喫煙によるがんの潜伏期間は平均25年。放射線被ばくによるがんは、2年で顕在化するともいわれています。なのに、CT側のリスクだけ世に伝わらないのは、健診を推進する厚労省や医学界に都合が悪いだけに、怪しいものです。老人固有の病とされていた3大疾患(がん、脳卒中、心臓病)も、いつの間にか成人病と改称され、ついに生活習慣病と呼ばれるようになった。老いを病に見立てて、国民に健診を強要するなんて、国家による脅し、“内なるテポドン”ですよ。そうして医療費抑制、つまり税金出し渋りの国是に従う国民を増やせば、行き着く先は1億総神経症化です」

 くだらない健康神話に付き合う人々は、ご苦労さん。独身男の人生は「太く短く」で、いいじゃないか。

by yupukeccha | 2009-07-16 10:00 | 社会  

<< 両院総会求め署名した自民党議員... 閃光の記憶 核廃絶へオバマ氏と... >>