<屋久島>原生林壊す過剰な訪問者

2009年5月18日 朝日新聞 変わる自然遺産

 鹿児島県の屋久島。夜の訪れとともに標高1千㍍の森も漆黒の闇に包まれる。ところが、広がる原生林の核心部にある縄文杉のの周りには。オレンジや黄緑の明かりが点々とともっていた。展望デッキには6張りのテント。酒を飲み、はしゃぐ声が森に響く。

 黄金週間の午後9時すぎ、ヘッドランプを付けて近くの水場まで来た静岡県の女性(40)は「山小屋に泊まろうと思ったけど、いっぱいだった。やむおえずテントを張った」と話す。「山の仲間と4人で来た。縄文杉の前に泊まれてちょっとラッキー」

 ここ数年、テントや寝袋を持参して泊まりがけで縄文杉を見に行く観光客が増えている。規制する決まりは特にないが、環境省は困惑気味だ。展望デッキの上で火気を使ったり、デッキ周辺に使用済みトイレットペーパーを残していったりする例もあるという。昨年夏は、デッキが焦げる事故も起きた。

 93年に世界自然遺産に登録されてから、屋久島に入る観光客は急増した。山岳部への入山者は、00年の4万5千人から08年は10万9千人に増加。5月4日は今年最多の約1千人が縄文杉を目指した。

 登山道では、登る人と下る人とが入り乱れ、渋滞が起きる。一部は木道や階段が整備されているが、幅は約60㌢しかない。すれ違うとどうしても木道から外れてしまう。土が流れて木々の根がむき出しになり、地表を覆っていたはずのコケがなくなっていた。

 縄文杉の展望デッキ近くでは腰掛ける場所を求めて観光客があふれていた。「コケがないから座っていいんじゃない。座るからコケがなくなったんです」。さくを越えて森に入ろうとする登山客に向かってガイドの声が飛んだ。

 屋久島や環境省でつくる屋久島山岳部利用対策協議会は、入山者数の制限に向けて検討を始めた。日高十七郎・屋久島町長は「このままでは大切な共有財産を食いつぶすことになりかねない」と苦渋の表情だ。(鈴木彩子)


 世界自然遺産の登録から16年。自然と人とのかかわりを模索する屋久島を追った。
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by yupukeccha | 2009-05-18 18:00 | 社会  

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