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都会で餌を乞うゾウ、観光の目玉は動物虐待と非難 タイ

2009年02月24日 19:02 AFPBB News

 【2月24日 AFP】タイ・バンコク(Bangkok)の歓楽街ソイカウボーイ(Soi Cowboy)通りを、1人の酔った観光客が「ゾウの餌」を入れたバッグを何度も落としながらふらついていた。

 バーやキャバレーの派手なネオンがこうこうと輝く下、この男がからかっていたのは2歳になるメスのゾウだ。餌をやる振りをしてはかわす男が持つ、わずかなサトウキビのスナックを、ゾウはしきりにねだっていた。

 ついにしびれを切らしたゾウが鳴き始めると、ゾウ使いは手綱を引き、餌でじらすことに金を払う次の観光客グループの方へと連れ去った。  

「ゾウたちは疲れたり、歩けなくなれば殴られる。夜中の1時に」と、こうした境遇のゾウの救援事業を行っているソライダ・サルワラ(Soraida Salwala)さんは言う。

 タイの都市にゾウが最初に連れてこられたのは、タイ政府観光庁(Tourism Authority of Thailand)が観光の目玉として、多数のゾウを首都バンコクに招き入れた約40年前のことだ。しかし、ゾウによる稼ぎのうまみを知ると、飼い主たちは都市部にひんぱんに連れて出るようになった。

 1993年にはバンコクの路上で見かけられたゾウは10頭もいなかったが、ソライダさんによると、今では定期的にバンコクにやって来るゾウは約100頭。全国の都市部で「働く」ゾウは1000頭に上ると言う。ゾウに対する需要が高まり、海外からも密輸されている。

■減るタイ国内のゾウ、増える密輸

 野生動物の取引監視や啓発活動を行うNGO団体「トラフィック(TRAFFIC)」が1月に発表した報告書では、過去10年間で隣国ミャンマーからタイに、250頭の生きた動物が密輸された。「特にメス、それから子どものゾウは、タイの観光産業の需要を満たすためターゲットにされている」とTRAFFICのシニア・プログラム・オフィサー、クリス・シェパード(Chris Shepherd)氏は説明する。

 93年、タイでゾウのための慈善団体「アジア象の友(Friends of the Asian Elephant、FOAE)」を設立した前述のソライダさんによると、タイでは50年前には約4万頭いた野生または飼育されているゾウは、現在わずか4600頭に減ってしまった。

 ゾウの生息環境も悪化の一途をたどっている。狭い道路に充満する排気ガスのせいで、皮膚が硬化したり、結核にかかるゾウが増え、足をけがしやすくもなっている。ソライダさんは、北部ラムパーン(Lampang)に創ったゾウのための病院で、そうしたゾウたちを何頭も治療したことがある。

■ゾウ使いの出身、多くは貧困地帯

 ゾウの飼い主たちの多くは、タイの貧困地帯である北東部から出稼ぎにやって来るが、自分たちが生きていくのに必要なことだと主張し、ゾウを虐待していると考えるふしはない。スリン(Surin)県から「ナムワン」と名づけた29歳のゾウを連れて来た59歳の男性は、1日12キロを歩いて1000バーツ(約2660円)を稼いでいると語った。07年第4四半期の工場労働者の平均月給7329バーツ(約1万9500円)と比べると、破格の稼ぎだ。

 バンコクで出稼ぎをしている間、この男性は高速道路の陰にある駐車場で野宿している。「ゾウを働かせることを非難する人たちもいるが、地元にいたままでは家族もゾウも飢え死にしてしまう。食べ物がまったくないんだから」と訴える。

 ソライダさんは問題の根本を解決する政府の支援策がない、と嘆く。タイの法律には、交通関連法から衛生法まで、「マフート」と呼ばれるゾウ使いを取り締まる十以上の法律が存在する。06年には警察の特別班が結成され、観光客相手に餌をせがむゾウの見世物を、定期的に排除している。

 しかし、ゾウを地方部へ戻そうとした2つの政府のプロジェクトは共に失敗した。ひとつは02年のもので、国立公園の巡回にゾウを使用する計画だったが予算不足で頓挫した。06年にはスリン県に帰郷するゾウ使いたちに月1万2000円バーツ(3万2000円)の奨励金を支給したが、ゾウ使いらは元々ゾウを借りて出稼ぎに出ていたため、奨励金を受け取る資格がなく、このプロジェクトも進まなかった。(c)AFP/Claire Truscott

by yupukeccha | 2009-02-24 19:02 | アジア大旅行  

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