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公務員獣医師が足りない 家畜よりペット、学生流れる

2010年6月17日14時7分 朝日新聞

 宮崎県で家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の被害が広がる中、自治体職員として家畜の防疫対策や食肉の衛生検査を担う公務員獣医師の不足が各地で深刻化している。ペットなど小動物の獣医師を目指す学生が増えたためだ。朝日新聞の調べでは公務員獣医師の定員を定める20都道県のうち12道県で定員に満たない。伝染病対策に遅れが出てはいけないと、自治体は獣医師確保に必死だ。

 公務員獣医師は病気の牛や豚が食用に回らないよう食肉を検査し、畜産農家を回って家畜の伝染病予防を進める。口蹄疫が発生した宮崎県では、家畜保健衛生所の獣医師が農家に立ち入り検査をし、牛の検体を国の機関に送ることで感染が判明した。薬物注射などで家畜を殺処分する防疫作業も公務員獣医師が担うが、宮崎県だけでは人手が足りず、16日までに全国からのべ約3500人の公務員獣医師が派遣された。現在も39都道府県の103人が支援を続ける。

 5月に宮崎県に入った埼玉県の獣医師は、約20人の獣医師とともに4カ所の農場を回り、家畜の殺処分を続けた。「口蹄疫は一番重要な病気と学んだが、症状を見たのは初めて。病気の家畜が見つかったとの報告が次々と届く中、少しでも拡大を食い止めたいと考えて作業した」と話す。

 青森県十和田市の食肉処理場では、十和田食肉衛生検査所の10人の公務員獣医師が牛の肝臓や腸に切り込みを入れ、状態を調べていた。獣医師55人で食肉処理場5カ所の検査を担う青森県の検査頭数は年99万4千頭。1頭あたり十数秒で調べなければならない。「ここは食の安全を守る最前線。本当は倍以上の人員がほしい」と、同検査所の新谷哲士・総括主幹は話す。敗血症など一部の家畜の病気は人に感染する恐れもある。肉の廃棄を命じ、病因を突き止めるのも獣医師の役目だ。

 ペットブームを背景に、毎年約1千人いる獣医学系大学の卒業生の半数以上が犬、猫などのペットを診る小動物獣医師になる一方、「公務員獣医師は完全な売り手市場」と岡本芳晴鳥取大教授はいう。家畜臨床や公衆衛生の教員が足りず、公務員の仕事を知らない学生も多いためだ。1986年と比べ、2008年の獣医師数は小動物が2.6倍に増えたが、地方公務員は5%減。小規模畜産農家が減り、大型の産業動物を診る獣医師は13%減った。

 498人の公務員獣医師がいる北海道は昨年度、74人を募集したが採用は34人。今後5年で79人が定年退職する。人手不足で時間外勤務が増え、検査や防疫に支障が出る懸念もある。畜産県の鹿児島県も昨年度は12人を募集して採用は8人だった。161人の公務員獣医師がいる宮崎県は獣医師の定員はないとしているが、昨年度の採用は14人の募集に対し12人にとどまった。

 朝日新聞の調べでは、獣医師の定員を定める20都道県のうち12の道県で定員割れとなっていた。北海道で51人不足し、岐阜県で18人、鹿児島県で10人、新潟県で7人足りない。薬剤師や臨床検査技師が獣医師の仕事の一部を肩代わりしている県も複数ある。(鈴木暁子)

     ◇

 〈自治体の公務員獣医師〉 自治体の家畜保健衛生所や食肉衛生検査所、保健所で家畜の伝染病予防や改良、病気に関する研究(家畜衛生)▽食肉の検査や狂犬病予防、食品衛生の監視指導、動物の感染症に関する研究(公衆衛生)を担う。野生動物の保護・人工繁殖や動物愛護も担当する。2008年現在で全国に8604人。
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by yupukeccha | 2010-06-17 14:07 | 社会