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「ブログ」市長、対決第一幕 市職労事務所に退去通告

2009年6月12日16時38分 朝日新聞

b0161323_2164244.jpg 「ブログ市長」として知られ、市議会の不信任決議に伴う5月末の出直し市長選で再選された鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)が11日、市庁舎にある市の職員労働組合事務所に対して使用許可を取り消し、1カ月以内の退去を通告した。公約した「市役所改革」がいよいよ第一歩を踏み出した形だが、組合側は反発し全面対決の様相だ。強引にも映る「竹原改革」の第2幕は実を結ぶのか。

 「市職労事務所は長年使用料や光熱費を払っておらず、不当な便宜供与。市民の役に立っていない」

 竹原市長は11日の記者会見で退去を迫る理由をこう説明した。市は午後5時ごろ使用許可を取り消す文書を市職労に渡し、別館にある事務所入り口2カ所に張り出した。

 市職労の落(おち)正志委員長は「あまりに理不尽で唐突。上部団体とも協議し、法的手段も考慮し対応策を講じたい」と怒りをにじませた。

b0161323_2181998.jpg 市職労の事務所退去は市長の公約だ。再選後の1日の記者会見でも「自治労は背任組織」と切って捨て、まず第一に実行するとしたのが「事務所撤去」だった。

 市職労側は「公務員の職員組合事務所は他の自治体でも役所敷地内にある」と主張する。実際、鹿児島県内では組合がある県と35市町村の事務所はすべて庁舎や敷地内にある。しかし、竹原市長は「阿久根のかたちは阿久根市民が決める」と、意に介さない。

 この日夜には、事務所撤去に向けた市長と市職労の団体交渉が予定されていた。市民も含めた公開による団交を望む市長に市職労が難色を示したことで中止となり、市長側が退去通告を強行した。

 組合事務所前には午後6時ごろから、市長を支持する市議や市民が「自治労は阿久根から出て行け」などのプラカードを掲げて、シュプレヒコールを上げた。

 エスカレートする一方の事態に、市民からは「この対立は異常」「なぜ話し合いで解決できないのか」と、不安がる声も聞かれた。

 竹原市長は自身のブログでも、市職員の給与などの待遇を巡り「市長と議員が職員組合と癒着してきた結果」などと市職労を批判してきた。

 「早期退職制度を使って52歳で辞めた給食センターの女性職員の退職金が3800万円やっど(だよ)。民間なら無理」

 いま、市民の間にはそんな話が飛び交い、市長は「自治労が議員の勉強不足に乗じて、民間とかけ離れた仕組みをつくった」と説明する。

 国家公務員の月額給与を100とした場合の地方公務員の給与水準を示すラスパイレス指数で見た場合、08年度の阿久根市は94.9。全国の市の平均の98.3を下回り、県内18市中、下から3番目だ。市職労は「他と比べ高くない」と主張しているが、市長は「そもそも市職員の給与と国家公務員を比べる仕組みが疑問」と攻撃を緩めない。

 市職労側は市長選前の4月下旬から「本当のところを知ってほしい」と題したビラ4種を市中心部の世帯に配布。「98年度から全職員の昇給を停止している」「今年5月からは2~8%の給与減額をしている」などと記し、市民に理解を求めているが、まちでは市長の「改革」に期待を寄せる声も多く聞かれる。

 市長は公約の中で「20億円ある職員給与費を半減する」と唱えた。19年度決算を元にした市財政課の試算では、8億円を削減しようとすると、1人あたり約633万円だった市職員の平均給与を約300万円下げる必要がある。

 市職労が合意しなくても、市長提案の条例案が市議会で可決されれば人件費の削減はできる。市長は就任後の会見で「市民からの信頼をやりがいにする職員に変えれば、人件費問題は簡単に片づく。ハートが重要」と話しているが、市長寄りの市議でさえ「いきなり半減は無理。仮にそんな提案があってもにわかに賛成はしにくい」と慎重姿勢だ。

 〈阿久根市長と市職労〉 竹原市長が2月、市職員の給与明細をネットで公開し、「年収700万円以上の職員が54%は我慢の限度を超える」などと「高給」批判をした。4月には「時間切れ」を理由に、団交がまとまらないまま給与カットを断行し、市議会も認めた。市議会の不信任決議による失職直前には、各課窓口に人件費を張り出させたが、直後に何者かにはがされた。出直し市長選では、公約に「自治労事務所を市役所から追放します」と明記。市と事務所は使用料を全額免除する契約を長年結び、昨年3月までは電気、水道料も免除されていた。
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by yupukeccha | 2009-06-12 16:38 | ルポ・コラム  

変わる自然遺産 屋久島から(1) 原生林壊す過剰な訪問者

2009年5月18日 朝日新聞

 鹿児島県の屋久島。夜の訪れとともに標高1千㍍の森も漆黒の闇に包まれる。ところが、広がる原生林の核心部にある縄文杉のの周りには。オレンジや黄緑の明かりが点々とともっていた。展望デッキには6張りのテント。酒を飲み、はしゃぐ声が森に響く。

 黄金週間の午後9時すぎ、ヘッドランプを付けて近くの水場まで来た静岡県の女性(40)は「山小屋に泊まろうと思ったけど、いっぱいだった。やむおえずテントを張った」と話す。「山の仲間と4人で来た。縄文杉の前に泊まれてちょっとラッキー」

 ここ数年、テントや寝袋を持参して泊まりがけで縄文杉を見に行く観光客が増えている。規制する決まりは特にないが、環境省は困惑気味だ。展望デッキの上で火気を使ったり、デッキ周辺に使用済みトイレットペーパーを残していったりする例もあるという。昨年夏は、デッキが焦げる事故も起きた。

 93年に世界自然遺産に登録されてから、屋久島に入る観光客は急増した。山岳部への入山者は、00年の4万5千人から08年は10万9千人に増加。5月4日は今年最多の約1千人が縄文杉を目指した。

 登山道では、登る人と下る人とが入り乱れ、渋滞が起きる。一部は木道や階段が整備されているが、幅は約60㌢しかない。すれ違うとどうしても木道から外れてしまう。土が流れて木々の根がむき出しになり、地表を覆っていたはずのコケがなくなっていた。

 縄文杉の展望デッキ近くでは腰掛ける場所を求めて観光客があふれていた。「コケがないから座っていいんじゃない。座るからコケがなくなったんです」。さくを越えて森に入ろうとする登山客に向かってガイドの声が飛んだ。

 屋久島や環境省でつくる屋久島山岳部利用対策協議会は、入山者数の制限に向けて検討を始めた。日高十七郎・屋久島町長は「このままでは大切な共有財産を食いつぶすことになりかねない」と苦渋の表情だ。(鈴木彩子)


 世界自然遺産の登録から16年。自然と人とのかかわりを模索する屋久島を追った。
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by yupukeccha | 2009-05-18 18:00 | ルポ・コラム