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ものづくり神話

2010年10月1日0時8分 朝日新聞

 1960年12月、池田内閣によってスタートした所得倍増計画は、生産を重視した成長戦略であり、経済状況を一変させることになった。その後20年で、我が国の製造業は米国に追いつき、追い越したが、「ものづくり日本」などと自画自賛の評価も始まった。

 我が国は敗戦による国土破壊で工場も壊滅。米国では戦前の生産設備がそのまま使われた。製造業では、設備更新は競争力強化の必須条件。日本が優勢になったのは、最新鋭設備で再出発した当時の事情も大きい。

 いま、実質20年以上、不況が続いている。製造業の設備投資はまったく勢いがない。高い成長が続くほかのアジア諸国では、我が国よりも低い法人税率、短い減価償却期間が適用され、新鋭設備への更新を後押しする。我が国のものづくりが追いつかれるのは、時間の問題だ。

 この間、工作機械の性能はすさまじい進歩を遂げ、その多くは日本製だ。ITを駆使した工作機械は、熟練工でなくてもマイクロメートル(千分の1ミリ)単位の精度が維持できる。この機械を最も多く購入し、増設しているのは、日本企業ではなく、アジアの新興企業だ。

 ものづくりの伝統などという精神論の通用する時代は終わった。いまや設備投資の遅れは技術の遅れを意味するのだ。

 不況脱出のためには、設備投資による生産面の活性化こそ重要だ。法人税の引き下げのほか、減価償却についても他国並みに短縮し、そして中小企業特別償却なども早期に復活させるべきだ。

 金融緩和だけでは、企業の設備投資は始まらない。法人税率の引き下げだけで産業の空洞化を止めることもできない局面にある。(樹)

by yupukeccha | 2010-10-01 00:08 | 経済・企業  

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