<カンボジア>国連に書簡「タイが脅迫」

8月10日8時52分配信 毎日新聞

 【バンコク西尾英之】タイとカンボジアの国境付近にあるヒンズー教寺院「プレアビヒア」周辺の領有を巡る対立で、カンボジアのフン・セン首相は8日、国連に「タイがカンボジアを脅迫している」と非難する書簡を送った。タイのアピシット首相がこれに先立ち、カンボジアへの強硬対応を求める反タクシン元首相派系の集会で「武力行使」に言及したことに強く反発した。フン・セン首相はタクシン氏に近く、国境を巡る両国の対立は、反タクシン派の動向も絡み激化しかねない様相だ。

 タイの反タクシン派組織「民主市民連合」(PAD)系の「愛国者ネットワーク」は7日、政府に対し00年にカンボジアとの間で領土問題を巡り紛争の防止などを定めた覚書の破棄を求める集会を開催。アピシット首相はこの集会に出席し、政府の立場を説明。さらに8日には国営テレビの番組で、PAD幹部と領土問題に関する公開討論をした。

 首相は、覚書の破棄は拒否しながらも、「領土問題でカンボジアに譲歩しない」と語り、外交的解決を目指す姿勢を示しつつ、「武力行使は最後の選択だ」などと述べた。

 カンボジアのフン・セン首相は、アピシット首相の発言のうち「もし解決できないならば、外交と武力の双方を使用する」との部分をとらえ、「武力での脅迫は、国連憲章に違反する」と書簡に記し国連に送付。9日には「タイとの2国間協議は行き詰まっている」として、問題に対処する国際会議の開催を求める考えを表明した。

 反タクシンのアピシット首相は、政治集会の開催禁止を盛り込んだ非常事態宣言が継続中でありながら、今回、PADの大規模集会開催を認めた。

 旧来の支配層が中心で右派勢力のPADは、カンボジアに厳しい姿勢。タイが実際に軍事力で領土問題の解決を図る可能性はほとんどないが、アピシット首相は「武力行使」に言及することで、反タクシン派の不満のガス抜きを図ったとみられる。

 タイ地元紙が9日報じた世論調査では、カンボジアとの関係悪化を懸念し、PADの活動に反対する声が優勢だった。アピシット首相がさらにPAD寄りの姿勢を続ければ、カンボジアとの関係悪化だけでなく、国内の批判も浴びかねない。

 ◇ことば プレアビヒア寺院

 アンコール王朝が9~11世紀に建設した山岳寺院。両国が一帯の領有権を争っていたが、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領との判断を下した。08年にカンボジアの申請で世界遺産に登録されたが、これをきっかけに寺院周辺の領有未確定地をめぐる対立が再燃。寺院付近では散発的に両国軍が交戦、死傷者も出ている。
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by yupukeccha | 2010-08-10 08:52 | アジア・大洋州  

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