イオン火付けで大激論…お布施定額制で仏教界が真っ二つ

2010/8/13 16:57  夕刊フジ

 お盆は多くの人が帰省し、実家の宗教や宗派を再確認する時期。そんな折も折、仏教界が揺れている。発端は流通大手「イオン」などが続々と打ちだしている「お布施定額制」だ。宗教行為に“値段”をつけるのか、と仏教界は猛反発。しかし、一部には流れに乗る“造反”僧侶も現れ、お布施や葬儀のあり方を巡って宗教界が真っ二つに分かれている。お布施を払う側としては、一体どちらの声に耳を傾ければいいのか。

 「お布施は“商品”ではありません。宗教行為に値段を付けることは、仏教の根幹を崩すことにもなりかねない。やっと仏教界が内部改革に動き始めた矢先なのに…」

 嘆息するのは全日本仏教会の関係者。同会は、伝統仏教教団58宗派、36の都道府県仏教会と8つの仏教団体が加盟する業界団体。宗派間の調整・連絡を取り仕切り、仏教界全体を代表して折衝役も担う唯一の団体だ。

 問題にしているのは、昨年9月に葬儀事業に参入したイオンが、今年5月からカード会員らに向けて始めた「お布施の目安額を明示する」というサービス。これが「越権行為」だとして、全日本仏教会はイオンに意見書を提出し、抗議の姿勢を打ち出した。

 「もともと菩提寺を持たない人向けに始めた『僧侶紹介サービス』の一環です。これまで、お布施の額については明確な基準がなく、心ない僧侶に法外なお布施を要求されるなど、トラブルも多かった。それが『お布施の趣旨と外れる』というのが仏教界の言い分です」(都内の葬儀業者)

 イオンはこのサービスを全国展開するが、それがまた別の問題を引き起こしているという。

 「良好な寺檀関係のある寺からすれば、まるで冒涜的なやり方」と指摘するのは臨済宗妙心寺派の僧侶で、作家の玄侑宗久氏(54)。

 「都市生活者の中には菩提寺を持たない人も多いが、地方にはまだまだ一律には割り切れない関係が生きており、そこに殴り込みをかけられる感じがする」

 ただ、こうしたサービスを展開しているのはイオンだけではない。

 昨年3月からインターネットでの僧侶の紹介サービスを行っているのは、名古屋市を拠点にする「お坊さんjp」。同サイトには現在、全国の主要58宗派の僧侶160人が登録している。主宰する古田治氏(53)は「全国には、自分の寺を持てない僧侶や、檀家が少なくて食べていけない僧侶がたくさんいます。時代の流れに応じて寺も変わっていかざるを得ない」と説明する。

 同サイトに登録する僧侶のひとり、愛知県春日井市の天台宗系寺院の副住職(53)は「批判しているのは、檀家をたくさん抱える一部の恵まれたお寺さん。僧侶の中には、檀家さんがいなくて“仕事”がなく、食えない人がたくさんいます」と内情を明かす。

 イオンに協力する僧侶も数多い。同社コーポレートコミュニケーション部は「浄土真宗や曹洞宗など主要8宗派の寺と提携。およそ600の寺から僧侶をご紹介できます」と語る。

 前出の関係者は「いまのところ、どの宗派もイオンに反対の姿勢を示していますが、その方針に背いた際の懲罰規定などは設けていないところがほとんど。ですが、このままだと葬式が商行為とみなされ、宗教法人の非課税の原則まで崩れてしまう」とし、解決策を模索したいという。

 仏教界の対立はともかく、実際にお布施を払う側として気になるのは、定額制でもきちんと死者を弔えるのかという点。

 従来派の玄侑氏は「布施は“気”の流れのようなもの。決められた額を出しても気の動きはまったく起こらない」とお布施の定義を説明。露骨な値付けに真っ向から反対する。一方、定額制派の前出の僧侶は「お布施はあくまで“気持ち”。その多寡で弔いの形に軽重はありません。従来のように、葬儀屋と寺があいまいな形でお布施の金額を決めるのは遺族に不安感を与えるだけです」と話している。
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by yupukeccha | 2010-08-13 16:57 | 社会  

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