脱線“再生”急ブレーキ…言論自由化も「どうすればよいのか」

7月21日13時47分配信 産経新聞

 電車の「防護無線」の予備電源のヒューズが抜き取られた事件で、大阪府警に逮捕された車掌、藤田博和容疑者(49)は「会社に不満があった」と供述したという。JR西日本では平成17年4月の福知山線脱線事故を反省し、昨年から「自由に物の言える企業風土」を作り出す取り組みを本格始動したばかり。乗客の安全を担うはずの車掌の逮捕に、社内には「なぜだ。どうすればよいのか分からない」と困惑の声が広がった。

 JR西は脱線事故の翌月、再発防止策を国土交通省に提出。遅れを出すなどミスをした乗務員らに電車に乗せず反省文を書かせるなどする「日勤教育」を改め、ダイヤにもゆとりを持たせた。

 19年6月の国交省航空・鉄道事故調査委員会(当時)の最終報告書は、同社の「上意下達」の硬直した企業体質が事故の背景と指摘。さらに昨年秋には、経営陣が事故調の委員に事前接触する報告書漏洩(ろうえい)問題が発覚、企業モラルの欠如が露呈した。

 佐々木隆之社長は風通しのよい企業風土に改善するため、昨年から、自ら駅や車両基地などの現場に足を運び、社員と意見を交わす「安全ミーティング」を開催。さらに「企業倫理委員会」を設置し、社員が自由に発言できるような具体策を打ち出してきた。

 藤田容疑者の逮捕はこれらの取り組みの最中でのできごと。JR西によると、藤田容疑者は今年5月に乗客から車内放送の声が小さいとの苦情を受け、指導を受けたこともあったが、処分歴や事故はなかった。ただ、目立たない存在で、同僚との交流も少なかったという。

 JR西は、藤田容疑者が「会社に不満があった」「仕事がいやになった」とと日頃から不満を抱いていたことを事前にキャッチできてはいなかった。

 ある幹部社員は「何を考えているのか分からない社員がいることも事実」とした上で、「乗務員は一人で勤務する時間の長い仕事だけに、監視することが難しい。逆に厳しくすると『上意下達』だと非難される。一体どうすればよいのか」と頭を抱えた。

 藤田容疑者の逮捕を受け、藤田容疑者が所属する天王寺車掌区を管轄する大阪支社の山本章義支社長は「信頼を損ねる結果となり、誠に申し訳ない。二度とこのようなことが起きないよう努めるとともに、お客さまの信頼を得られるよう引き続き安全の確保に全力で取り組んでいく」とのコメントを発表した。

 ■脱線事故遺族「あるまじき行為、解明を」

 JR福知山線脱線事故で長男を亡くした木下廣史さん(51)=兵庫県三田市=は「安全を守るべき車掌としてあるまじき行為。会社への不満があったと言うが、なぜそれがヒューズを抜くことにつながったのか。個人の行為ではあるが、再発防止のためにもJR西は原因や事件に至った経緯を解明する必要がある」と話している。
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by yupukeccha | 2010-07-21 13:47 | 社会  

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