タクシン元首相代理人 アムステルダム弁護士 元首相の所在は秘密

6月27日8時9分配信 産経新聞

 クーデターで首相の座を追われたタイのタクシン元首相の代理人で、ロンドンを拠点とする弁護士のロバート・アムステルダム氏(カナダ人)が来日し、産経新聞のインタビューに応じた。アムステルダム氏は、さきのタイの騒乱について、元首相や元首相派市民グループ(赤シャツのデモ隊)に責任はないと強調し、事件の真相解明について、第三者による調査を求めた。元首相の居場所については、明らかにしなかった。(岩田智雄)

「アピシット政権は破綻(はたん)」

 -騒乱では多くの死傷者を出し、タクシン氏はタイ政府にテロリストとして手配されている

 「当時私は、バンコクの赤シャツグループの占拠地区にいた。そこで見聞きしたことからいえば、タクシン氏や赤シャツグループをテロリストと断じるのは、現タイのアピシット政権が破綻していることを示すことになる。近代的な政府で、反対陣営の党首をテロリストだといったのは、ジンバブエのムガベ大統領だけだ。調査もなくテロリストと名付けるのは、法律的に当惑させるものといえる。

 世界中のほとんどすべてのNGO(非政府組織)がバンコクで何があったのかを解明するために、独立した調査が必要だといっているのに、アピシット首相はこうした意見をひっくり返そうとしている」

 -赤シャツグループの中に武装したグループがおり、タクシン氏の指示を受けていたのは事実か

 「こうした武器は政府によって公開された。しかし、それは使われたこともないような新品だった。私が代理人を務めている人たちは武器を使うことはなかった。なぜなら、自分を守るために使う前に、虐殺されてしまったからだ。

 われわれ自身、真相を調査をしている。1976年と92年の混乱のときと同様、今回も権力者側が殺された側を事前に挑発しており、殺されて当然だったという表現をした。タクシン氏は私を通じて、国連に承認された独立した第三者による調査を求めている。

 さらに、現政府は鑑識的な調査を阻止した。なぜなら、アピシット首相は自身が軍にどんな指示をしたかを隠したいからだ。首相の指示によって、日本人を含むジャーナリストを死なせたのだ。

 私はタクシン氏の代理人として日本に来ているのは、独立した第三者による調査を行うことを日本政府にも支持していほしいというためだ。

 今タイ政府は和解に乗り出しているというが、タイを支持している人だけを対象にしている。赤シャツグループはその中に入っておらず、まるで犬のように追いかけられている。その指導者たちは軍の収容所に入れられ、不法に拘禁されている。扱いも極めて残虐だ。行方不明者もいる。それでなぜ和解といえるのか」

(タイ政府は証拠品やメディアのビデオ映像から、デモ隊の中に武装した分子がおり、彼らが自動小銃やてき弾銃によって、多くの人命を奪ったことは明らかだとしている。また、拘束者の人権は十分に尊重されていると主張している。)

「ただちに選挙の実施を」

 -タクシン氏にはこれまで、裁判所から相次いで厳しい判決が出されている

 「まったく法律が順守されていない状態にさらされている。非合法的な体制に対抗して立ち上がっているのがタクシン氏だ。誰がクーデターを起こし、誰が民主的に選ばれたのかを忘れないようにしたい。

 -タクシン派の人たちは昨年4月、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議を暴力によって妨害した

 あの時点であの会議をするということは、クーデターによって生まれた非合法な政府によって行うということであり、それはASEANの基本的な憲章に違反すると思った人がいたということは理解できる。暴力には反対だが、会議が開かれることに深いショックを覚える人たちの気持ちはわかる」

 -和解のためには何をすべきか

 「選挙だ」

 -すぐにか

 「そうだ。いや、きのうやるべきだった。アピシット首相はいろんなことをして選挙を避けようとしている。彼は選挙を一番恐れている」

 -プミポン国王の調停を求める声がある

 「国王については一切、話したくない。タイには不敬罪があって、政府は国王に対するあらゆるコメントをやめさせているからだ。法律の陰に隠れている人たちが、不敬罪を利用している」

 -政府側はこうしたタイのタブーについても議論しようといっているが

 「そうであれば、なぜ人をやとって、インターネットのサイトを監視し、不敬罪の運用を厳しくしているのか。完全にうそをついているとしかいいようがない」

タクシン氏の国籍は?

 -タクシン氏がモンテネグロの国籍を持っているのは事実か

 「そうだ」

 -今、主にどこにいるのか

 「彼の安全を懸念している(のでいえない)。私の電話先にいるとだけはいえる」

 -先日、パリで買い物をしているところを目撃された

 「そうだ」

 -ときどきはパリにいるのか

 「旅行はしている。だからこそ、政府はタクシン氏に次から次へと嫌疑をかけているのだ。そもそもテロというのは死刑に値する罪だ。どんな国も彼をタイへ引き渡したりしないだろう。政府のねらいは、タクシン氏の信用失墜だ」

 (タイ政府筋によれば、タクシン氏はモンテネグロに親しい知人がいる。同筋は、タクシン氏が他にもいくつかの国の旅券を所持しているいっている)

 -タクシン氏は以前、来日したとき、暗殺されることを恐れているといっていた。騒乱では、タクシン派の軍人がテロリストとされて殺害された。タクシン氏もテロリストといわれている。彼は暗殺を一層恐れているのではないか

 「タイの軍部は、反対勢力の人物を人間性がないというように描いてきた。70年代は共産主義者、今はテロリストだという。タクシン氏自身、身の危険が高まっていると感じているだろう」

 -タクシン氏は来日する予定はないのか

 「旅行の計画については発言しないことにしている」

責任の所在はどこに

 -騒乱で多くの人が亡くなり、商業施設は損害を受けた。タクシン氏や赤シャツグループにある程度責任があると思うか

 「ない。だからこそ調査をしてほしい。そうすれば明らかになる」

 -赤シャツグループが放火していたとの報道がある

 「それが彼らだったかどうかはわからない。歴史的にみると、タイではグループ同士が対立しているときに、周辺に犯罪者がいた。それは、どちらのグループにも属していないものだ。今回も、放火したのが誰だったかは調査しなければわからないはずだ」

 -騒乱のあと、タクシン氏や赤シャツグループの指導者は、ゲリラ戦になる可能性があるといっていたが、これは暴力ではないのか。

 「違う。自分たちの仲間が一斉にひきたてられたときのコメントだろうが、彼らが判断されるのは行為であって発言によってではない。暴力を行っているのは、銃を持って暴力はいけないといっている人たちだ。無力な人たちは、暴力を口にしているだけだ」

 -今後は同様の活動を日本以外でもするのか

 「時期は未定だが、オーストラリア、カナダ、イタリア、そして死傷したジャーナリストの国へ行く」
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by yupukeccha | 2010-06-27 08:09 | アジア・大洋州  

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