IWC 「南極海ゼロ」で攻防…商業捕鯨再開見送り

6月23日22時26分配信 毎日新聞

 モロッコ南西部アガディールで開かれている国際捕鯨委員会(IWC)総会は23日、全体会合を再開した。しかし、議長役のリバプール副議長は、休会中の2日間にわたる非公式協議を経ても「各国の基本的立場は隔たったまま。主要議題の決着にはなお多くの時間が必要だ」と指摘。商業捕鯨の実質的再開を認める議長案について、25日までの今総会での合意を断念した。加盟各国も来年の総会まで1年間の「凍結期間」を置く方向で一致した。【行友弥、太田圭介、アガディール会川晴之】

 ◇異例の非公式協議…「決裂」は回避

 今回のIWC総会では、全体の捕鯨頭数を大幅に削減する一方、日本の沿岸捕鯨など商業捕鯨の再開を事実上認める議長案が示されていた。82年の商業捕鯨モラトリアム(暫定的停止)決定以来続く、加盟国間の対立を解消するのが狙いだ。

 欠席したマキエラ議長(チリ)に代わって議長役を務めるカリブの島国、アンティグア・バーブーダ出身のリバプール副議長は、参加69カ国(加盟88カ国)の主張の隔たりを埋めるため、21日の開会直後に全体会合を中断。捕鯨推進派の4カ国(日本、ノルウェー、アイスランド、韓国)と、地域別に分けた非捕鯨国6グループとの間で非公式協議を進める異例の議事運営を行った。

 感情的な非難の応酬が目立った従来の総会と違い、延べ30回に及んだ非公式協議では「根本的立場の違いにもかかわらず誤解が解け、歩み寄ることができた部分もあった」(リバプール副議長)。反捕鯨国のニュージーランドも議長案に基づく議論を容認。決裂よりも、捕獲数削減という実をとることを目指したとみられる。

 だが、豪州、欧州連合(EU)などの反捕鯨国が、南極海での日本の捕鯨を段階的に廃止するよう求めると、日本はクジラ資源には余裕があるとして「ゼロとする科学的根拠が見あたらない」(舟山康江農林水産政務官)と反論。アイスランドが日本に鯨肉を輸出していることを問題視したEUが、自国内消費に限定する貿易禁止措置を迫ると、アイスランドは「自由貿易が原則」と反発した。

 日本は、舟山政務官が23日の総会で「議論のベースを受け入れない国がある」と述べ、議長案に沿った議論を事実上拒否した豪州などを間接的に批判した。豪州は先月末、日本の調査捕鯨廃止を求めて国際司法裁判所に提訴した経緯があり、反捕鯨陣営でも最強硬派だ。一方、米国は自国の先住民捕鯨を守るため反捕鯨国ながらも議長案作りを実質的に主導したが「非政府組織(NGO)の圧力の高まりで積極的な姿勢を維持できなくなった」(日本政府交渉筋)との見方がある。

 唯一の成果は辛うじて「決裂」を避け、1年間の冷却期間を挟んで来年以降に望みをつないだ点。中前明・日本政府代表は「根本的な対立構図は何も変わっていない」としながらも「各国が主張を言い張る従来の会議ではなく、協議できる状態になった」と語った。

 ◇国内関係者は複雑

 商業捕鯨の再開を認める議長案採択が見送られたことに、国内の沿岸捕鯨関係者は複雑な反応を見せる。

 北海道網走市で沿岸小型捕鯨業を営む「三好捕鯨」の三好英志社長は「あまり期待はしなかったが、やはり残念。お互いにもっと譲歩できなかったのか」と悔しそう。一方、総会の会場で議事を見守った和歌山県太地町の三軒一高町長は「残念だが、沿岸捕鯨再開が議長案に盛り込まれたのは評価できる。5年前なら考えられなかったこと」と来年以降に期待をつないだ。

 日本は88年に沿岸の商業捕鯨から撤退。現在は網走、太地と鮎川(宮城県石巻市)、和田(千葉県南房総市)の4拠点で、IWCの規制対象外の鯨種の捕獲や、調査捕鯨にあたっている。議長案の線で合意すれば捕獲対象が広がるなどの利点があったが、22年の悲願はお預けになった。

 一方、長年にわたり日本人のたんぱく源だった鯨肉の消費は減り続けている。農林水産省の統計によると、国内の鯨肉消費量は1962年度の23万トンから08年度は5000トンまで落ち込んだ。09年末の在庫量は年間消費量に匹敵する4246トンとだぶつき気味だ。

 調査捕鯨の費用は、国の補助金を原資とする融資と鯨肉の売り上げで賄われており、消費の低迷は採算悪化に直結する。日本人の鯨離れが進めば商業捕鯨の必要性そのものが問われかねない。
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by yupukeccha | 2010-06-23 22:26 | 社会  

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