<ホンダ>中国の工場、操業再開…ストのリスク抱え

6月2日21時0分配信 毎日新聞

 賃上げをめぐるストライキで操業を停止していたホンダの中国の部品工場が2日、稼働を再開した。これを受け、中国国内の四つの完成車工場も、4日にも操業を再開する見通しになり、事態は収束に向かいつつある。ただ、中国経済の急速な発展で労働者の権利意識が高まる半面、過酷な労働環境は温存されたまま。労働者の不満は高まっており、本格的なストライキがホンダ以外のメーカーにとっても新たなリスク要因に浮かび上がってきた。【仏山・米村耕一、宮崎泰宏】

 ◇高まる労働者の権利意識

 「おれたちの苦しい暮らしぶりが、あんたたちに分かるもんか」

 5月31日、広東省仏山のホンダ変速機工場の正門付近。20歳前後の約40人の従業員が、約100人の工場関係者に叫んだ。

 工場関係者の一人はマイクを握り「(月366元=約5000円=の賃上げなどの)新規定に従うか、そうでなければ離職しなさい」と説得を試みる。

 変速機を製造するこの工場では5月17日に賃上げを求めるストライキが始まった。変速機供給が止まったため中国の四つの完成車工場すべてが順次ストップ。「店頭在庫で対応できるため、販売に影響はない」(ホンダ広報)とはいえ、完成車生産のメドが立たない。ホンダは31日、現在の月給1544元(約2万800円)を24%賃上げし、1910元とする案を提案。一部で操業を再開したが、納得しない従業員が抗議を続けた。

 正門前の言い争いは過熱。工場関係者が従業員を囲む輪を狭めると突然、殴り合いが始まった。「殴られた」と叫ぶ従業員。「中国人が中国人にこんな対応をして。国の恥だ」。従業員は結局、抑え込まれたが、怒りは収まらなかった。

  ◇   ◇

 会社が用意するアパートに帰った従業員に話を聞いた。アパートは同じ部屋に8~10人が一緒に住まわされ、トイレも共用が一つ。河南省出身者(18)は「家賃は会社持ちだが食費や電気、水道代、生活必需品を出すと100元(約1350円)ちょっとしか残らない」

 中国はホンダにとって重点市場だ。09年の販売実績は57万台で22.5%の大幅増。0.2%の微増の62万台の日本に迫る。「生産能力をフル活用しても足りない水準」(伊東孝紳社長)。年産能力は12年に現在の3割増の83万台に増やす。

 だが、従業員にとって肝心なのは待遇。「外資の一流企業」に就職しても、「生活水準が向上しない」との不満が爆発した形だ。

 ホンダの中国部品工場でのストライキは、好調な経済を背景に賃上げ圧力が強まる中、労働者の権利意識も以前より高まっていることが影響している。「出稼ぎ」の若者が期待する「豊かな生活」と現実とのギャップが労働者の不満を募らせていることも大きい。

 中国では、内陸部と沿海部の経済格差が顕著で、沿海部の工場は主に内陸部からの出稼ぎ農民が支えてきた。しかし、政府が08年11月に打ち出した総額4兆元(54兆円)の景気刺激策で内陸部の公共工事が増えると、「出稼ぎ」も減り、労働が強化される傾向にあるという。

 また、労働の担い手が80~90年代生まれで、以前より豊かな生活を送ってきた若者が中心になったことに加え、労働者の権利を保護する法制度が08年に施行されたことも、意識を変化させている。08年の中国での労働争議の受理件数は約70万件と07年の2倍に急増しており、日本貿易振興機構(ジェトロ)中国北アジア課の中井邦尚課長代理は「労働者が権利を声高に主張しやすい環境になった」と指摘。企業にとってリスク要因であることが鮮明になっている。
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by yupukeccha | 2010-06-02 21:00 | アジア・大洋州  

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