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全日空が狙う“日の丸”キャリア 3年後に「JANA」?

1月31日19時52分配信 産経新聞

 日本航空が法的整理に追い込まれたことを好機ととらえ、全日本空輸が“日の丸”を背負う「ナショナル・フラッグ・キャリア」の座を虎視眈々と狙っている。日航の撤退路線を積極的にカバーすると同時に、公的支援を受けた日航の攻勢を封じるため、政府に「公平な競争条件」を要求するなど、その意欲を隠さない。政府内でも、半官半民の「企業再生支援機構」による支援が終了する3年後に、日航の国際線を全日空に統合するシナリオが現実味を帯びつつある。

 ■パワープレー攻勢

 「アイスホッケーで相手がペナルティーボックスに入っているようなもの。追い越すチャンスだ」

 日航が1月19日に会社更生法の適用を申請した3日後。全日空の岡田圭介専務は、ウォールストリート・ジャーナルのインタビューにこう答えた。

 27日には成田-杭州(中国)線など日航撤退路線の新設・増便や国際線の強化を盛り込んだ来年度事業計画を発表。岡田専務の言葉通り、反則を犯した選手の一時退場で人数が減ったチームに仕掛ける“パワープレー”のように、日航に対する攻勢に打って出た。

 支援機構の再建計画では、平成24年度までに国際線を93路線から79路線に削減する。これに対し、全日空の国際線は昨年10月時点で37路線と倍以上の開きがある。全日空は、羽田や成田の拡張で大幅に増える国際線の発着枠を大量に獲得し、その差を一気に詰める構えだ。

 これまで発着枠の割当では、政官にパイプを持つ日航が優遇されてきたとされるが、「全日空もかつての日航のように国土交通省や政治家へのロビー活動を展開している」(政府関係者)という。

 一方で、日航破(は)綻(たん)の翌20日には伊東信一郎社長が国交省と公正取引委員会に乗り込み、「公平な競争環境がゆがめられる可能性がある」とクギを刺した。公的資金の投入や借金棒引きで身軽になった日航が低価格料金競争を仕掛けてくる恐れがあるためだ。

 ■国際線分離案

 「日航の国際線を全日空に統合してもいいのではないか」

 再建問題が大詰めを迎えていた昨年12月30日夜の首相官邸。菅直人副総理や前原誠司国交相ら関係閣僚の協議で、事実上の日航解体が話し合われたという。関係者によると、提案したのは、峰崎直樹財務副大臣とされる。

 再建計画を検討していた企業再生支援機構の内部でも、「国際線を分離し、国内線に特化した方が、より再建が確実になるとの試算が行われた」(関係者)という。

 この解体案が一部で報じられると、日航と国交省は「聞いていないし、あり得ない」と猛反発した。

 結局、国際線分離は公式には日の目を見ることはなかった。だが、葬り去れた訳ではなく、機構による支援期間である3年の猶予が与えられたにすぎない。

 前原国交相は日航破綻の当日、「日本に航空大手が2社必要なのか」「(国際線分離は)一つの選択肢」と明言。日航と全日空が“切磋琢磨”する大手2社体制を前提としてきた日本の航空行政を大転換する可能性に言及した。

 ■浮かんでは消えた統合説

 日航(JAL)と全日空(ANA)が経営統合して「JANA」になる。日航の経営が悪化する度に統合説が浮かんでは消えた。

 業界では「全日空が発信源」との声がもっぱらだ。全日空内部では、“親方日の丸”の甘えが抜けない日航に代わり、日本の空を担うという意欲がくすぶり続けている。

 世界を見渡せば、ナショナル・フラッグ・キャリアの破綻は日常茶飯事だ。米国では2000年以降にユナイテッドなど4社が破綻。スイス航空は、再生に失敗し姿を消した。

 巨額の公的資金を投入しても日航再生は容易ではない。「オープンスカイ」(航空自由化)が進展し競争が激化する中、日航が生き残るには、「世界的に台頭する低価格のLCC(ローコスト・キャリア)に生まれ変わるしかない」(航空アナリスト)との指摘は多い。

 だが、そうなれば安値合戦に発展し、日航と全日空が共倒れになりかねない。足の引っ張り合いをしていては、「日本の国際競争力の低下にもつながる」(企業再生に詳しい岸博幸・慶大大学院教授)。

 “自由の空”で大手2社体制を維持することは極めて困難になりつつある。3年後、日航再生が思うように進まず、「JANA」が現実となる可能性は十分にある。(大柳聡庸)

by yupukeccha | 2010-01-31 19:52 | 経済・企業  

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